CDの記憶 加古隆のピアノ
ちょっと耳にしてすぐ識別できる、独自の音の世界。
「パリは燃えているか」の頃より前はCDが出るたびに買い求め、ライブにもたぶん3回は行った。
テレビ・映画音楽の巨匠となってしまわれてからは、なんだか別の世界にいってしまわれたような気がして、それまでよりも聴くことが少なくなってしまった。
加古さんのCD、かなり集めたのだが前にほとんどなくなってしまった…
ここ数年取り出して聴いてなかったのは確かだが、あまりにも残念。
息を呑むような集中がもたらす静謐さの中に熱気と狂気を孕んだ加古さんのピアノは大好きで、聴いていると呼吸が整って五感も鋭敏になり、体調が良くなるような気がする。
ライブで忘れられないのは、もう大昔のことだがたしか昭和女子大学人見記念講堂でのソロ。1曲ごとに違う景色の場所に連れて行かれて、ほとんどあちらの世界に行きっぱなしだった。
さすがに昔過ぎて曲目はあらかた忘れてしまったが、「海の嵐」は忘れようにも忘れられない。
小舟が大海を静かに滑っていくかのような導入から始まって次第に激しい即興演奏となり、最後は文字通り怒涛のような、幾重にも重なる巨大な音の波が会場を呑み尽くした。その後に最初の小舟がまた現れ、静かに去っていくように曲は終わった。
他に覚えているのは『幻想行』収録の「アラビアの町」か「ナイルの源流にて」か、どちらか。助走をつけて走り始めた音の翼は気が付けば聴き手を乗せて大空へ飛翔する。砂漠を過ぎると下には白い街並みが広がる。馬をひく人々や市場。やがて、彼方に見えていた雄大な山脈が近づいてくる。
加古さんの演奏を思い出していると、そんな映像を思い浮かべないではいられない。
松本のハーモニーホールでもソロピアノを聴いた。その頃には、1曲ごとにトークを挟むようになっておられた。
幸いにも、一番好きなソロデビュー盤(たぶん)『L‘AUBE 夜明け』は手元に置いて時々聴いていたため無事だった。
Amazonで検索しても画像なしの中古品しか表示されない。これは大事にしなければ。
これはもう、加古さんの魅力が凝縮されたような名曲名演揃い。
ビル・エヴァンズの名曲「Peace Piece」のカバーもすばらしい。
何枚持っていたのか、数えてみよう。
ついでに一言コメントを。(タイトルと発売年のデータはウィキペディアから拝借)
L'Aube-夜明け(1983年)
とにかくすばらしい。
ソロ・コンサート(1985年)
集中力をまざまざと感じさせる名演。
ポエジー(1986年)
聴いた回数ではこれが一番かも。
いにしえの響き 〜パウル・クレーの絵のように〜 - KLEE(1986年)
クレーの絵に曲を付けた、加古さんならではの曲集。
スクロール(1987年)
国内の腕利きミュージシャンを集めたジャズアルバム。楽しい。
KENJI(1988年)
宮澤賢治の世界。作品の朗読を交えながら、音楽は聴き手を乗せ銀河へと走る。
賢治にインスパイアされた音楽の中でも特にすばらしいものの一つなのではないか。
- アーティスト: 加古隆,野沢那智,宮沢賢治,柴山洋,篠原正嗣,溝口肇,喜多原和人,吉原すみれ
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
- 発売日: 2003/10/22
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幻想行(1989年)
中東風のパーカッションをフィーチャーした、シルクロードを風に乗って旅するような曲集。これ大好き。
- アーティスト: 加古隆,ジャン・ジャック・アブネル,ネネ,シェール・ティディアンヌ・ファル
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
- 発売日: 2003/10/22
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ピアノ交響詩「春 -花によせて-」(1990年)
オーケストラとの共演。ライナーノートは池田満寿夫だったような。
ESTAMPE SONORE(エスタンプ・ソノール)(1991年)
浮世絵の美意識を音楽にしたオリジナル作品。
アポカリプス 〜黙示録(1992年)
モダンダンスのために書いた緊張感に富んだ音楽。これはぜひまた聴きたい。
風の画集(1992年)
水の前奏曲(1993年)
ノルウェーの森(1994年)
この3枚は共通した印象。オリジナル曲と有名曲のアレンジとが渾然一体となって一つの世界を形作っている。
- アーティスト: 加古隆,デビット・ウイリアムス,ホープ・ハドソン,ジェイ・アンダーソン,バダル・ロイ,ティム・リース,キャサリン・アンダーソン,ミノン・ルッツレ
- 出版社/メーカー: エピックレコードジャパン
- 発売日: 1994/10/21
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予感 -アンジェリック・グリーンの光の中で-(1998年)
タイトルとジャケットのとおり。
- アーティスト: 加古隆,白鳥英美子,オレグ・リアベツ,平松英子,東京混声合唱団
- 出版社/メーカー: エピックレコードジャパン
- 発売日: 1998/08/21
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静かな時間(1999年)
二胡との共演。静かな悲しみを湛えた世界。
- アーティスト: 加古隆,モサリーニ(ファン・ホセ),ジェンホア(ジャン),モレレンバウム(ジャキス)
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 1999/10/21
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風のワルツ(2002年)
NHKの番組のテーマ曲「黄昏のワルツ」他
そういえば数年前、ピアニストの辻井伸行さんに作曲のコツを伝授しているところをテレビで拝見したことも思い出される。ますますのご活躍をお祈りしたい。