記憶の音節

なくしたCDの記憶を書き始めました。ブログ名は某書から拝借。

CDの記憶 武満徹のうた

 


武満徹 「翼」 - YouTube

 

武満徹の合唱のための一連の「うた」を最初に聴いたのは、高校の「芸術鑑賞」だった。記憶の間違いでなければ演奏は岩城宏之指揮、東京混声合唱団。

今思えば相当に贅沢な企画ではあった。

当時クラシックを多少聴き始めていたとはいえさすがに武満は初体験。しかし一連のうたの良さは、演奏のすばらしさもあっていきなりストレートに伝わってきた。

最初はざわついていた会場も次第に静まり、「死んだ男が残したものは」あたりではもう固唾を呑んで聴き入り、終演後は大拍手。

 

作詞は谷川俊太郎によるものが多い。もともと谷川ファンでもあった私はこれらの歌がすっかり気に入ってしまい、後にCDを見つけるたびに買ってきては聞き比べた。

 

まず岩城宏之指揮の東京混声合唱団。これは「合唱」と聞いて想像するとおりの模範的な(?)歌声。

 

小さな空: ◯と△の歌

小さな空: ◯と△の歌

 

 

次は晋友会合唱団。これも非常に優れた合唱。東混とはかなり違った味わいがあって面白い。

 

明日ハ晴レカナ、曇リカナ~武満徹:混声合唱のための〈うた〉

明日ハ晴レカナ、曇リカナ~武満徹:混声合唱のための〈うた〉

 

 

時代とともに、次第に合唱以外の分野からも取り上げるアーチストが増えてきた。

石川セリがポップスのアレンジで歌った盤。全く違和感なく、最初から彼女のために書かれたよう。小さなライブハウスで聴きたい。

 

翼 武満徹ポップ・ソングス

翼 武満徹ポップ・ソングス

 

 

波多野睦美のアルバムにも何曲か収録されていた。繊細で美しい発声、発音が抜群。叶うなら教会か小さなホールかで聴いてみたい。

 

アルフォンシーナと海

アルフォンシーナと海

 

 

ショーロクラブが何人かのボーカリストアン・サリーおおたか静流ほか)をフィーチャーした盤。これはダウンロードで買ったため唯一現在手元に残っている。とても気に入っていて時々聴く。

 

 

武満徹ソングブック

武満徹ソングブック

 

 

これらの曲の一部をアマチュア合唱団で歌った経験もあるあるが、大変だった。一見やさしいメロディーなのだが、楽譜はけっこう複雑で素人にはかなり難しい。

難しいといっても、バッハの難しさとも違う。バッハでも音がとんでもない飛び方をするが、着地がピタリと決まれば荘重な和音が美しく、時に劇的に響く快感で報いられる。

しかし武満の曲は、パート譜を追っていってもどの音に飛ぶか予測がしづらい上にハーモニーがまったく独特だったりで、果たして正しく歌えているのかなかなか確信が持てない。そのあたり、親しみやすそうに見えてもやはり現代音楽なのだな、と感じる。

 

「○と△のうた」や「うたうだけ」など、気が付けば時々口ずさんでいることがよくある。

「翼」や「小さな空」を黙って心の中で歌って(聴いて)いるとふと涙ぐみそうになることも。

武満さん、もっと長生きしてこんな歌をたくさん書いていただきたかった。

  


小さな空 by 波多野睦美:メゾソプラノ - YouTube

 

↓これは武満が編曲したもの。

 
混声合唱 さくら - YouTube