記憶の音節

なくしたCDの記憶を書き始めました。ブログ名は某書から拝借。

CDの記憶 鈴木重子さん

前に書いたような事情でなくなってしまったCDの記憶を書いてます。

今回は鈴木重子さんの「Just Beside You」。

これもかつて繰り返し聴いたアルバム。下のアマゾンのリンクには2007年とありますが、もっと前の発売のはず。

タイタニックのテーマやライオンキングの歌など、有名曲を集めたカバー集。

鈴木さんのお名前を意識したのは、ジャズもあれこれ聴いていた頃、「東大法学部出身、異色の経歴のジャズシンガー」と紹介されている記事を読んだのが最初だったかな。実際司法試験志望から歌い手に転身されたようです。

その後、何かのテレビ番組にゲスト出演されていたのをたまたま拝見した時に、その独特なたたずまいにすっかり魅了されてしまいました。

あの時の印象はどうやってもうまく言えません。

無理矢理言葉にするなら、まるで重力の影響を受けず空中に浮遊している半透明の仙女のような風情でした。司会者が鈴木さんに向けて発した日本語の質問は、まったく反撥力を感じさせないベールのような柔らかい何かに、音もなく吸収されていくのが目に見えるよう。

質問が終わるとその仙女は、少し間を置いてから、ゆっくりした日本語で丁寧に答えておられました(あの会話の間は、仙界語と日本語の翻訳に要する時間だったのではないか、と妄想…)。高性能な頭脳から半透明の(?)お体を通過してゆっくりと穏やかな口調で紡ぎだされるやや低いお声には、名状し難い安らぎが感じられました。

こんな生命体がおられるのか、と私はすっかり嬉しくなってしまい、その後も時々その番組の印象を思い出しては一人人には見せられない顔で安らぎに浸っていたものでした。

その後、CDも何枚か買って聴いてみました。

その中でこれについて書こうと思ったのは、長年いろいろな音楽を聴き漁ってきた間でも、後にも先にもない衝撃の経験をしてしまったからなのです。

 

以下ネタバレです。(文字を反転させています。)

このCDには、の後に、シークレットトラックがあります。さすがに何の曲か明かすのはやめておきますが、聴けば大人も子供もみんな知っているようなやさしい歌です。

このCDを買ってきて再生し、最後の曲(The Rose)が終わって良い気分に浸っていると、静かなピアノの前奏が始まりました。あれ?と思っているうちに間もなく歌声が。。。間もなく周囲の空気が一変し、私の意識は茫然として空中に漂っていました。

あの瞬間ほど、音楽で「あちらの世界」(あの世とか彼岸とか言ってもいいのかもしれません。)をまざまざと感じた経験は他にないかもしれません。(あっても、シューベルトモーツアルトの一部の曲くらいでしょう。)

その時感じた彼岸は、この世の苦しみの源である様々な束縛を脱して魂(?)だけとなった生き物たちがいつか帰っていく世界でした。肉体を脱した魂は、現世をやや上空から眺めすべてを見通しながらも、自身は限りない安らぎのうちに憩っている・・・

一瞬でそんな空想が展開しました。日本の民間信仰の死後の世界以外の何物でもないですなあ。伝統的イメージは、何だかんだ言っても体にしみ付いているのですねえ…

以上ネタバレでした。

 

どの曲も、鈴木さんならではの安らぎの世界に浸れます。

ところで鈴木さん、公式サイトをちょっと拝見したところ、現在は音楽以外にもずいぶんいろいろ活動の幅を広げておられるようです。尊敬。 

ジャスト・ビサイド・ユー

ジャスト・ビサイド・ユー

 

 

動画も一つ貼っておきましょうか。

 TEARS IN HEAVEN / SHIGEKO SUZUKI "Just ...