CDの記憶:リヒターのバッハ
一夜にして(?)失われたCDの印象を、思い出しながらぼちぼち書いていきます。
しかし書こうとして改めて痛感するのは、集め始めた頃と現在の音楽環境の違い。
CD集め始めた頃は、インターネットの普及もまだまだこれからという時期でした。
音楽雑誌や新聞のレビューを参考に、あちこち探してやっと手に入れたものです。
ところが今は、You Tubeで検索するとたいがいの曲は出てくる。音質その他気にしなければ無料動画で十分。
なくしたCDのうち、どうしても手元に置いておきたいものは買い直そうと思ってみても、You Tubeにある現実を見ると、うーむ…と迷ってしまうのが正直なところ。
さらに、買い直すとしてCDでなければならないか?という問題も。というのは、今やiTunesの品揃えも相当なものになっていて、価格と保管場所を考えるとダウンロードのほうが好ましい。しかしものによってはCDジャケットが欲しい、うむむ…とうなってます。
さてさて、前置き長くなりましたが、最初はやはりこれでしょう、ということでリヒターのバッハを。
まずはマタイ受難曲。
- アーティスト: ヨハン・セバスティアン・バッハ,カール・リヒター,イルムガルト・ゼーフリート,ミュンヘン・バッハ合唱団,ヘルタ・テッパー,エルンスト・ヘフリガー,ミュンヘン少年合唱団
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1991/09/25
- メディア: CD
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これはもう問答無用、説明不要の名演奏。
この演奏の冒頭の重量感、「いまここで決定的なことが始まってしまった。」感(?)はおそらく空前絶後。演奏や録音の技術、あるいは曲に関する考証研究が今後どれほど進歩しても、この演奏が質的に乗り越えられることはちょっと想像できません。
イエス・キリストの処刑という、ある意味では人類史上最大の事件をぐいぐいと描いていくバッハ先生の筆の容赦なさときたらもう…
先年亡くなった吉田秀和さんは、西洋文明の産物から一つだけ選ぶならこの曲だろう、と書かれていました。(「私の好きな曲」の中だったかな?)。ほぼ賛成。
質量ともに重量級だけにそんなにしょっちゅう聴くような曲ではないのですが、これまでどういうわけか何度も生演奏の機会に恵まれました。
記憶違いでなければ最初はサントリーホールで聴いたコルボ指揮ローザン(?)室内管弦楽団と合唱団。
次は松本ハーモニーホールでのドイツのオーケストラと合唱団(たぶんライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団)
その次は小澤征爾さんとサイトウキネンオーケストラほか。
いずれも言葉に尽くせないすばらしい演奏でした。それぞれに思い出がありますが、それはまたの機会にして、ひとまずこれにて失礼します。