記憶の音節

なくしたCDの記憶を書き始めました。ブログ名は某書から拝借。

CDの記憶:長谷川陽子さんのコダーイ 無伴奏チェロソナタ他

無伴奏チェロソナタばかり3曲を収録したCDです。 

このCDにはとにかく驚きました。

収録曲はどれも聴いたことがなく、長谷川さんの演奏という点に興味をもって購入したもの。

一応は心の準備をして再生しはじめたのですが、一曲目のコダーイの導入部の激しく深い音、昔の時代小説風に言うなら裂帛の気合を込めた一音ににいきなり心を串刺しにされてしまったのでした。

あとはもう、曲の起伏とともにジェットコースターのように上下し、鳥のように宙を舞い、はたまた潜水艦に乗ったように深海に潜航し・・・といった具合に最後まで翻弄されっぱなし。

その後、長谷川さんが実演でこの曲を弾くのを聴くことができました。

その実演が、さらにすごかった。ステージの真ん中にチェロを抱えて陣取った長谷川さんが弓を構えて無声の気合を発すると、最初の一音とともに激しい風のようなものがステージから客席に吹き付け、体が椅子の背もたれに押し付けられて身動きもできない状態が続いたのでした。演奏の間、どうやって息をしていたのかわかりません。

激しい第一楽章に続く楽章では、音楽は次第に深い世界に沈潜していき、展開される多彩な音型につれて映像的想像力の乏しい私の脳裏になぜかヨーロッパ映画ふうの情景が次々と展開されたのでした。

たった一人でステージに立ち、1時間以上にわたって聴衆の前で演奏を繰り広げることがどのようなことなのか、私のような素人にはなかなか想像がつきません。長谷川さん自身、どこかで「無伴奏曲はオール一本で大海に漕ぎ出すようなもの」という意味のことをおっしゃっていたような。

ともあれ、思い出すだけで目が覚めて鳥肌が立つような1枚。

後に他の何人かの男性チェリストの演奏でコダーイソナタを聴いたが、このCDほどの迫力を感じたことはありません。 

コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ

コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ

 

 長谷川さんは小品の演奏もすてき。小品集ではフィンランドなどの珍しいすてきな曲も収録されています。

 

G線上のアリア

G線上のアリア

 

  

珠玉のチェロ名曲集

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